ゴルフボールに関する規定は、ひと言で表すと「ボールが飛び過ぎないための制限」です。では、具体的にどのようなルールがあり、もし、そのルールが無かったら、ボールの飛び方はどう変わるのでしょうか。
ゴルフボールのサイズが〝1ミリ〟小さいと〝5〟ヤード飛ぶ!? 知られざるゴルフボールのルールと基礎知識
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ゴルフショップのボールコーナーにはたくさんの種類のゴルフボールが並んでいます。一見、どれも似ているようで、よく見るとロゴやカラーリング、ディンプルの形…… それぞれ個性的ですが、実はゴルフボールにはとても厳格な〝ルール〟が存在しています。このルールは、ゴルフというスポーツの公平性を保ち、用具の性能だけで勝負が決まってしまわないように定められています。もし、ルールがなければ、驚くほど飛ぶボールが開発されて、ゴルフコースの距離はどんどん伸びて、ゴルフのゲームそのものが変わってしまうかもしれません。
今回は、ゴルフボールに隠された〝大きさ〟〝重さ〟〝形〟のルールについて、ブリヂストンゴルフのボール開発担当者のお話をもとに解説していきます。

ルールの基本は〝飛び過ぎない〟ための制限
〝大きさ〟のルール : 小さいほど空気抵抗が減って飛ぶ
ゴルフボールの大きさには「直径42.67ミリ(1.68インチ)以上であること」というルールがあります。これより小さいボールは、公式な競技では使用できません。
なぜ小さいボールはダメなのでしょうか。その答えは「小さい方が、空気抵抗が少なくなって飛ぶ」からです。空気抵抗とは、ボールが空中を飛んでいくのを邪魔する力です。ボールが小さいほど、その邪魔が少なくなり、より遠くまで飛んでいくのです。
ブリヂストンゴルフのボール担当者によると、その影響はとても大きく、「1ミリボールの直径が小さいと、飛距離は5ヤード伸びる」と言います。逆に、「1ミリ大きいと5ヤード落ちる」そうです。わずか1ミリの違いが、セカンドショットで使うクラブを1番手替えてしまうほどの差を生むのです。
各ボールメーカーはこの規定を非常に厳格に保っています。例えばブリヂストンゴルフのボール製造現場には、規定サイズぎりぎりの穴が開いた〝専用リング〟があり、製造ラインから抜き打ちでボールを取り出し、そのリングを〝通らないこと〟を定期的にチェックしているそうです。
〝重さ〟のルール : 重いほど推進力が増して飛ぶ
次に〝重さ〟のルールです。ボールの重さは「45.93グラム(1.62オンス)以下」と定められています。大きさとは反対に、重さには上限が設けられています。
理由は、「重い方が、推進力が高まって飛ぶ」からです。同じ力で打った場合、重いボールの方がエネルギーをより多く保ったまま飛んでいき、重い弾丸のように力強く飛んでいきます。
こちらも同開発担当者によれば、「1グラム重いと、(一般的なヘッドスピードでは)2~3ヤード飛距離が伸びる」とのこと。逆に1グラム軽いと、2~3ヤード飛ばなくなるだけでなく、風の影響を受けやすくなってしまいます。

つまり、ルールがなければ、ボールメーカーは、〝より小さく〟〝より重い〟驚異的に飛ぶボールを作ることができてしまうのです。そうならないように、厳格な上限と下限が定められています。
〝対称性〟のルール : どの向きで打っても同じように飛ばなくてはならない
大きさと重さのルールに加えて、もう一つ重要なのが〝対称性〟の規定です。これは、「ボールはどの回転軸で打っても同じように飛ぶこと」という考えに基づいています。ボールの向きを変えただけで飛距離が変わったり、曲がり方が変わってはいけない、ということです。

この対称性のテストは非常に厳格です。ゴルフボールなどゴルフルールのすべてを司るR&A(英国に本部を置くゴルフ全般を統括するゴルフの総本山)ではロボットを使ってボールの回転軸を変えた2つの異なる向きでボールを打ち出し、その飛距離と滞空時間の差を測定します。「キャリー(着地までの飛距離)の差が4ヤード以内」「フライトタイム(飛んでいる時間)の差が0.4秒以内」と定められています。
実はゴルフボールのルールには、さらに〝初速制限〟という規定もありますが、この説明は長くなるので、また別の機会にしたいと思います……。
こうした厳しいテストをクリアしたボールだけが、R&AとUSGA(全米ゴルフ協会)によって〝公認球〟として認められます。公式な競技では、公認球しか使うことができません。現在、世界中には1000種類以上の公認球があります。
1球のボールに込められたメーカーの技術と品質管理
日本でいち早くゴルフボールの研究(1932年)と製造(1934年)を始めたブリヂストンゴルフは、90年以上の歴史を持つゴルフボール製造の草分け的存在です。

同社の開発担当者は、ルールの中で最高のパフォーマンスを発揮させるためには、品質管理が常に重要だと語ります。規定値ぎりぎりの世界でボールを設計・製造しているため、材料の品質検査はもちろんのこと、特に重量に大きく影響するボール内部の〝コア〟と呼ばれる核の部分は、なんと全数検査を行っているそうです。

私たちがいつも使っているゴルフボール1球1球には、こうした厳しいルールと、メーカーの高度な技術、そして徹底した品質管理が詰まっているのです。
次にゴルフボールを選ぶとき、手に取ったそのボールに様々なルールと作り手の想いが込められていることを思い出してみてください。きっと、ボール選びがもっと楽しく、奥深く感じられるはずです。


