実は、ゴルフボールにも反発力を制限するための厳格なルールが存在します。その制約の中でボールメーカーがどのようにして〝飛ぶボール〟を生み出しているのか、特にボールの表面にある〝ディンプル〟の不思議な力に焦点を当てて解説していきます。
ゴルフクラブだけじゃない! ゴルフボールにもある「飛ばなくする」ルールとは?
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爽快な打球音とともに、ボールがどこまでも飛んでいくのはゴルフの醍醐味のひとつ。しかし、ゴルフクラブには「高反発規制」というルールがあり、反発力が強すぎるクラブは競技で使えないことをご存知の方も多いでしょう。では、ボールについてはどうでしょうか? 「ボールにも同じような規制はあるの?」といった疑問にお答えします。

ゴルフボールを縛る2つの〝飛距離規制〟
ゴルフクラブの反発係数の上限が定められているように、ゴルフボールにも「これ以上飛んではいけない」という明確なルールがあります。ゴルフの統括機関であるR&A(Royal and Ancient Golf Club of St Andrews/英国にあるゴルフ競技を司る総本山)によって定められていて、大きく2つの制限があります。
1. 初速制限
既定の条件下で打った時のボールが飛び出すスピード(初速)に上限を設けたもの。具体的には秒速76.2メートル+2%以下であること
2. 飛距離規制制限
R&Aが定めた標準的なテスト方法で打った時に、規定された合計飛距離(キャリーとラン)を超えてはならない

これらのルールがあるため、ルール適合ボールである限り、際限なく飛距離が伸びることはありません。すべての〝公認球〟は、この厳格なルールの範囲内で開発されています。
では、なぜ飛距離に差が生まれるのか?
「ルールで上限が決まっているなら、どのボールを使っても飛距離は同じじゃないの?」と思うかもしれません。しかし、実際にはボールによって飛距離性能には差があります。この差はどこから生まれるのでしょう? ブリヂストンゴルフのボール開発担当に聞いてみました。
「ボールが飛び出す瞬間、ルールの上限ぎりぎりの初速を安定して出すこと。そして、飛んでいく際に飛距離をロスさせる原因となる余計なスピンをいかに減らすか。この2つがまず重要です。そして、それらと同じくらいか、あるいはそれ以上に飛距離を左右するのが、ボール表面のくぼみ〝ディンプル〟の技術です」
ゴルフボールの象徴ともいえるディンプル。「もし、このディンプルがボール表面になくてツルツルだとすると、誰が打っても100ヤードほどしか飛びません。ディンプルには、ボールが空中を飛んでいく際の〝空気抵抗を少なくする〟〝揚力を上げる〟という2つの役割を、絶妙なバランスで成り立たせる働きがあります」
「ボールがツルツルだと、飛んでいるボールのすぐ後ろに空気の渦ができて、これが大きな抵抗(ブレーキ)となって飛距離を大きくロスさせてしまいます。一方、ディンプルがあるとボールの表面に薄い空気の層が生まれて、ボール後方の空気の渦の発生を抑え、空気抵抗を劇的に減らします。さらに、ディンプルはボールにバックスピン(進行方向と逆の回転)がかかった際に〝揚力〟、つまりボールを上方向に持ち上げる力を生み出し、重力に逆らって長く空中を飛び続け、飛距離を伸ばすことができるのです」
飛距離を決めるディンプルの4要素
ディンプルの性能は単に数の多さで決まるわけではありません。〝数〟〝深さ〟〝形状〟〝表面占有率〟といった要素のバランスによって決まると言います。
| 数 | 現在のゴルフボールのディンプル数は300~400個が主流です。昔は「数が多いほど高性能」と考えられ、500個を超えるディンプルのボールもありましたが、現在は数の多さがすべてではないことが分かっています。 |
|---|---|
| 深さ | ディンプルの深さは弾道に大きく影響します。一般に、浅ければ高く上がりやすく、深ければ低く抑えられた弾道になる傾向です。 |
| 形状 | 同じ円の配列だけでなく、ブリヂストンゴルフが開発した〝2重ディンプル構造〟のように、形状や大きさの違うディンプルを組み合わせることで、揚力を最適化する工夫がされています。 |
| 表面占有率 | ボール全体の表面積に対して、ディンプルが占める割合も重要な要素です。 |
これらをどう組み合わせるかで、ボールの弾道の高さやスピン量、直進性、そして飛距離性能が変わってきます。
ディンプルの違いが性能を生む〝マニュアル車〟と〝オートマ車〟
ディンプル設計の違いがボールのキャラクターを決定づけると言います。ブリヂストンゴルフのボール担当いわく、「たとえば、プロや中上級者に人気のツアー系ボールの代表、TOUR B Xシリーズのディンプル数は330個、アマチュアの飛距離アップに特化したディスタンス系ボールの代表、TOUR B JGRは338個です」
この違いを「車で言うマニュアルとオートマの違い」と表現します。「ディンプル数330個のTOUR B XとXSは、意図的にボールを曲げたい(ドローやフェードを狙って打ちたい)時に、その技術に反応してくれる操作性の高い〝マニュアル車〟のようなボールです。対して、338個のディンプルを持つTOUR B JGRはミスヒットの許容度が高い、ボールが曲がりにくい〝オートマ車〟のようなボールと言えます」

ボールにまつわる、あの噂 〝プロ支給品〟は存在するのか?
今回のテーマに直接関係はありませんが、最後にボールにまつわる噂について。よくゴルフファンの間で囁かれるのが、「プロが使っているボールは、我々が店頭で買うものとは違う特別にチューニングされた〝プロ支給品〟ではないか?」という疑問です。
この点について、ブリヂストンゴルフの担当者は「まったくありません」と断言します。
例えば、タイガー・ウッズが使うTOUR Bボールも、一般ゴルファーがショップで購入するTOUR Bボールも、全く同じものだということです。誰もがトッププロと同じ性能のボールを手にすることができる。これもゴルフの魅力のひとつと言えるでしょう。

ルールの中で進化を続けるゴルフボール
今回はゴルフボールにまつわるルールの話から、飛距離のカギを握るディンプルの秘密まで掘り下げてきました。ゴルフクラブと同様に、ゴルフボールにも厳格な初速・飛距離規制が存在します。限られたルールの中で、1ヤードでも遠くへ、そして安定して飛ばすために、メーカーはディンプル技術をはじめとする研究開発を続けています。
技術の進化とルールのせめぎ合い。ゴルフボールの世界はこれからもゴルファーを楽しませてくれるはずです。