AD レクスター
概要
構造
- 糸巻きボール(オールディンプル)
発売
- 1977年
メーカー希望小売価格
-
500円/黒・赤・青
※発売当時の価格です
商品特徴
1975年に設置した基礎研究部門のゴルフボール開発グループは、従来あまり注目を集めなかったディンプルの開発に焦点をあて、全表面に336個のディンプルをもち、球筋や飛距離のバラツキが小さくなる優れた特長をもつ糸巻きゴルフボールの開発に成功。この画期的なオール・ディンプル構造により、ゴルフボールに新機軸を開いた「AD REXTAR」を発売。開発・製造・販売の一体となった製品化がAD旋風を巻き起こし、ゴルフ愛好家から絶大な支持を得た。翌’78年のボール売り上げ高を前年比42%増と飛躍的に伸長させる。
BRIDGESTONE
GOLF BALL LIBRARY
- COLUMN -
AD REXTAR『AD REXTAR』の「AD」は「ALLDIMPLE」の頭文字で、ボールの全表面がディンプルで覆われているという意味だ。ディンプルの形状や大きさ、配列の方法などは現在とは違うけれど、ゴルフボールの表面にははるか以前からディンプルが設けられていた。
にもかかわらず、なぜオールディンプルの『AD REXTAR』が話題になったのだろう。
なぜなら、それ以前のボールは正確にはオールディンプルではなかったからだ。ボールの表面には、メーカーやブランドのロゴマークがプリントされている。だが当時の印刷技術では、ディンプルがついたデコボコの面にきれいにプリントするのは困難だった。無理にプリントしようとすれば、凹んでいるところにはインクがうまくつかず、かすれたような状態になってしまう。
AD REXTARボールはそのため、ロゴマークを印刷する部分のみ平面を設けていたのである。たとえばそれ以前『REXTAR』の場合、その部分のみ帯状に平面になっていた。もちろんこれはブリヂストンに限らずどこのボールメーカーも同じだった。したがって、正確にはオールディンプルではなかったのである。
ところが1977年9月に発売された『AD REXTAR』は、ロゴマークの下にも他の表面と同じようにディンプルが設けられているし、しかもロゴマークにもムラがなく、曲面に応じてきれいにプリントされている。真の意味での初のオールディンプルボールの誕生である。これは転写テープを開発することで可能になった技術だった。
それ以前、ロゴマークが入った部分だけ平面になっていたといっても、全体の表面積からいえばわずかな割合である。それが消えて全表面にディンプルが設けられたからといって、大きな違いはないだろうと思うかもしれない。
しかし実際には、弾道や飛距離に微妙に影響してくる。一部ディンプルがないということは、ディンプルに泥がつまった状態と同じと考えるとわかりやすい。それが空力特性に影響を与える。
しかも『AD REXTAR』では、ディンプル設計そのものが従来とは大きく変わっていた。大きさが以前より大きくなったし、ディンプルの占有率もアップした。当時開発に携わっていたスタッフは、「ディンプルを置けるだけ置いた」という。一言でいうなら、ディンプル設計の自由度が格段に高まったのだった。これによって空力的に有利になり、弾道の理想化や飛距離アップに向かっての研究開発をうながすきっかけにもなった。
AD REXTAR箱またこのボールは、本格的にコンピュータを導入して開発された最初のボールでもあった。弾道のシミュレーションやディンプル設計などにコンピュータが導入され、ゴルフボールが工業製品へと進化していく道を切り開いたという点でも記念すべきボールだった。『AD REXTAR』の開発後、ブリヂストンでは従来のボールもリニューアル時にオールディンプル化を進めた。他のメーカーがこれに追随したのはそれから数年後だった。
オールディンプルの優位性を認めたとしても、製造上は金型交換という作業がともない、莫大な設備投資が必要だった。そのため他社は数年間の遅れをとることになり、ほとんどのメーカーがオールディンプル化を実現する頃には、ブリヂストンのディンプル技術ははるか先へと進んでいたのである。