アルタス スモール

アルタス スモール
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アルタス スモール

概要

構造

2ピース

発売

1982年

メーカー希望小売価格

600円/黒・赤

※発売当時の価格です

商品特徴

日本初の2ピースボール「アルタス」スモール発売。特殊合成ゴムのコア「T-51」と強化カバー「高反発複合樹脂」採用。この画期的ボールにより、日本に「2ピースボール旋風」が起こる。「アルタス」は、’82年度日経年間優秀製品賞を受賞。

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BRIDGESTONE
GOLF BALL LIBRARY
- COLUMN -

アルタス スモール

ゴルフボールは構造的にいえば長い間糸巻きボールが主流だった。現在ではプロも含めてソリッドボールに取って代わられたが、80年代初めまではアマチュアも主に糸巻きボールを使っていた。というよりも、糸巻きしかなかったといってもいいだろう。

1960年、外資系他社が世界初の2ピースボールを開発してはいるが、話題になるほどの性能は備えていなかった。当時使ったことがあるゴルファーは「石コロを打っているみたいにカチカチで、とてもゲームで使えるようなボールではなかった」と振り返る。

こうした状況のなか、ブリヂストンから国産初の2ピースボールとして1982年3月に登場したのが『ALTUS』だった。ブリヂストンでは70年代半ば過ぎから2ピースボールの開発に着手していた。ただし当時は、「競技で使われるのは難しいかもしれないが、可能性はなきにしもあらずでは」といった程度の予測だった。

ところが、いざフタをあけてみると予想とは大違い。キャッチフレーズは「5番アイアンの距離を7番で」と、飛びを前面に打ち出したものだった。これが功を奏したのか、アマチュアゴルファーのあいだでたちまちのうちに話題が広がり、すぐに生産が追いつかない状況になってしまった。
現在のソリッドボールに比べれば、石コロとまではいわないにしても硬かった。スピンもかからない。にもかかわらず爆発的にヒットしたのはやはり、「もっと飛ばしたい」というアマチュアゴルファーの永遠の願いに応えたからだろう。しかも当時、メタルヘッドのドライバーが登場した時代で、「メタルと2ピースの組み合わせでもっと飛ぶ」といったウワサが『ALTUS』の人気に拍車をかけた。

『ALTUS』は発売当初、1個が600円だった。アマチュアゴルファー向けのボールとしては、当時としては破格といってもいい高額ボールだ。レクスターのパーシモンヘッドのドライバーが1本約3万円だったから、その50分の1である。現在の『X-DRIVE』が約9万円。その50分の1といえば1個1800円にも相当する。

これはひとえに製造コストの問題だった。
当初はコンプレッション製法で製造していたが、後にインジェクション製法に換えている。設備が従来とはまったく違うために莫大な設備投資が必要だったし、しかも2ピースボールはコアを真ん中に浮かせて製造するため、偏芯が発生しやすい。製品出荷前の検品での不良率は50パーセントにも達した。検品時での不良率が50パーセントといえば一般的に製造業においては間違いなく販売を断念せざるを得ないレベルである。それでもゴーサインを出したトップの決断にも驚かされる。

『ALTUS』はその後もウワサがウワサを呼んでヒットを続け、工場では休日返上で操業する状況だった。瞬間風速的ではあるにしても、ブリヂストンのボールが国内でシェアナンバー1の座についたのも、この『ALTUS』が初だった。
他のメーカーも手をこまねいて見ていたわけではない。とはいっても、先にも書いたように糸巻きボールとはまったく製造方法が異なるため、すぐにつくれるわけでもない。他社が相次いで発売してきたのは、『ALTUS』がデビューしてから1年近くたってからで、ゴルファーのあいだにはこの間にも「2ピースのブリヂストン」の評価は着実に浸透していたのである。