レイグランデWF
概要
構造
- スピンカバー2ピース
発売
- 1993年
メーカー希望小売価格
-
800円
※発売当時の価格です
商品特徴
世界最速「SSC590コア」、三元ポリマー軟配合スピンカバー「SS2260カバー」を採用し、2ピースの高い飛距離性能はそのままに、糸巻きのコントロール性の両立に成功。ニック・プライスの使用球として大きな評判を呼ぶ。ニック・プライスは、このボールで’94全英オープン、全米プロを制覇。
BRIDGESTONE
GOLF BALL LIBRARY
- COLUMN -
1993年、ブリヂストンの契約プロの使用ボールを構造別に見ると、女子ツアーでは2ピースが25%と4分の1にまでなっていたが、男子ツアーでは9%だった。残りの約9割が糸巻きを使っていた。ところが1年後の調査では、女子で47%と半数近くになり、男子でも36%と2ピースの割合が急増した。
このように大きな変革をもたらしたのは、「スピンタイプ2ピース」と呼ばれた『Reygrande WF』の登場によるものだ。
92年頃はまだ、「2ピースは飛ぶけれどアプローチのスピンが足りないのでプロは使わない」というのが一般的だった。裏を返せば、糸巻きは飛ばないけれどスピンがかかるということだ。だったら、2ピースの飛びを備えながら糸巻きに近いスピン性能を持ったボールができればプロも使うのではないか。こんな発想からスタートしたのが『Reygrande WF』だった。
まず、プロが求める糸巻き並みのスピン性能とソフトフィーリングを実現するには、カバーを柔らかくする必要がある。幸いにもデュポン社が開発したアイオノマー樹脂のサーリンがあった。しかし、単純に柔らかくするだけでは反発が落ちて、2ピースの最大のメリットである飛びが損なわれてしまう。それを補ったのが、ブリヂストンが以前から得意としていた高反発コアの開発だった。
「WF」は「Wound Feeling」の略。つまり糸巻き並みのフィーリングを持つ2ピースボールがこうして完成したが、プロにテストしてもらうにはまだハードルが高かった。というのも、一部を除いて多くのプロはまだ糸巻きに強いこだわりを持っていたためだ。そこでまずトップアマにテストしてもらうと、予想どおり、「飛ぶし柔らかくて、スピンもかかる」と好感触を得た。その後徐々にアマチュアのあいだに広がりはじめた。
ツアープロが使うきっかけをつくったのはニック・プライスだった。彼は93年の1月にブリヂストンと契約を結ぶと、発売直前だった『Reygrande WF』を選んだ。「Constancy」というのが理由だった。つまり糸ゴムを巻いた糸巻きボールに比べて、『Reygrande WF』はソリッドボールであるからバラツキがなく安定しているというわけだ。彼は「これからソリッドボールの時代が必ず来る」ともいった。
スタッフたちは半信半疑に聞いていたけれど、プライスがこの年米ツアーの賞金王になり、さらに翌94年にこのボールで全英オープンに続いて全米プロ選手権とメジャーを連覇する頃には確信へと変わりつつあった。
これに先駆けて、国内では93年に白浜育男が『Reygrande WF』でブリヂストンオープンを制覇。国内のツアーでは初の2ピースボールでの優勝者となった。
その後は、冒頭にあげたように急速にプロの使用球を糸巻きから2ピースへと変えていったが、このボールはプロたちが勝手に使いはじめたという点でも画期的だった。
プロが使うクラスのボールは通常、プロが何度も何度もテストを重ね、やがてプロトタイプというかたちでツアーで使う。その後、市販されるというケースが多い。ところがこのボールに関しては、多くのプロたちが使い始めたのは市販されてからだった。しかも、勝手に使いはじめたという点では、異例だった。
トッププロがメジャーを制したということも大きなきっかけであることは間違いないが、それに加えて、「スピンタイプ2ピース」という新しいジャンルを確立したその性能を彼らが認めたからこそでもある。事実、94年を境にプロの世界でも急速に2ピースが糸巻きに取って代わっていくことになる。同時に、これを機にブリヂストンのソリッドボール技術の評価がますます高まっていくことにもなった。