VOICE 2
望月 雄宣
ボール基礎技術開発部
「逆転の発想で新しいカバーが完成しました」
—ツアーボールのカバーは、どんな役目があるのでしょうか?
アプローチショットのスピン性能は、ほぼカバーの性能で決まります。ツアーボールには、ウレタンカバーを採用していますが、スピン性能が高いこと、耐久性に優れていることに加え、軟らかくて粘り気のある感触がプロやツアーボールユーザーの方に好まれています。基本的には、カバーが軟らかい方が、スピンはかかります。ウレタンは、限度はあるものの軟らかければ軟らかいほど耐久性も上がるので、傷がつきにくくなるのもメリットです。傷のついたボールだと、ドライバーで10ヤード以上も飛距離をロスしてしまうというデータもあるので、丈夫で、しっかりとスピンのかかるウレタンカバーが最適というわけです。
—ブリヂストンのウレタンカバーの特徴は?
「ツアーステージ」から「ブリヂストンゴルフ」に変わったあたりから、スピンの効きが特に良くなったと、プロから評価されています。軟らかいウレタンは、成型が難しく、以前は安定した品質が出しにくかったのですが、技術力が向上してきて、より狙った性能が発揮できるようになりました。最新モデルTOUR B X/XSは、歴代のツアーボールの中でも、非常に軟らかいカバーを使っています。もちろん、軟らかければいいというわけではなくて、ボール全体でのバランスが大事です。また、傷つきにくさだけでなく、耐光性にも優れていて、太陽の光で変色しにくいのも特徴です。
—新しい『TOUR B X/XS』は、新しい素材を使ったカバーになりました
「アプローチで飛ばないカバーを作ろう」となったとき、最初はとても戸惑いました。というのも、それまではいかに飛ばすか、耐久性をあげるかということに取り組んできましたから。ボールの初速性能を助けるために、カバーでも高初速。さらに傷つきにくさも向上させて、トータルで良い方向になると思い、開発を続けてきました。ところが、新しいボールは今までとは違う方向性で取り組まなくてはいけないので、自分の中で発想をまったく逆転させるところからスタートしたんです。単純にカバーの反発性能を落としてしまうと、ドライバーの飛距離性能も落ちてしまいます。散々悩み考えつくした結果、アプローチショットのみで、ボール初速が落ちるように設計するアイディアが生まれました。つまり打撃条件に応じてカバーでスピードをコントロールするということですね。
—それが新しい「リアクティブ・ウレタンカバー」ですね
衝撃吸収材としても使われる素材を少量だけブレンドして、アプローチ領域では、低初速で高スピンになるボールを実現できました。このアイディアが生まれてからも、どんな素材を、どの段階で、どれだけ加えればいいのか、試行錯誤を繰り返しました。完成したときは、これだっ!という感じがありましたね。本当に、考えていた通りボールが形に出来て、嬉しかったです。プロたちのニーズに合った、すごく良いボールが出来たかなと思っています。
PROFILE
望月 雄宣 プロフィール
2011年入社 ボール基礎技術開発部 所属
入社以来、ウレタンを中心にゴルフボールの材料の開発を担当。NEW「TOUR B X/XS」の「リアクティブ・ウレタンカバー」を生み出した「ウレタンカバー開発」のスペシャリスト。