VOICE B

Special interview FROM TOUR

VOICE 8

望月 雄宣

ボール基礎技術開発部

「完成形だと思っていたボールが、さらに進化しました」

—近年、「TOUR B X/XS」のカバーは、ゴルファーから非常に高い評価を受けています。

20年モデルでは、ドライバーでは初速が出て、アプローチでは初速が落ちる「リアクティブウレタンカバー」を搭載したゴルフボールを開発しました。22年モデルでは、よりコントロール性を高めて「乗り感」を増した「リアクティブiQウレタンカバー」を開発しました。

新しい24年モデルのカバーは、タイガー・ウッズがリクエストした「ディープ感」が加わった更に進化した「リアクティブiQウレタンカバー」になっています。

—「ディープ感」とは、あまり馴染みのない表現です。

タイガー・ウッズの要望で、24年モデルのコンセプトは「ディープ感」を増したいということになりました。新しく材料を選定していく中で、材料物性的にこの「ディープ感」をどう表現するかというのが、非常に難しかったですね。

数多くのサンプルを試して、その中からこれが「ディープ感」につながるんだという物を見つけて、それを数値化していきました。そのへんは企業秘密ではあるんですが、前モデルからの「乗り感」に加えて、軟らかい打感や打音などトータルな性能で「ディープ感」を実現しています。

—前作の22年モデルからは、どのような点が進化していますか?

スピン性能も向上していますが、最も大きく変わったことは、打感と打音などフィーリングの部分ですね。ツアーボールにとって必要な性能はしっかりと維持しつつ、フィーリングの要素を向上したことが「ディープ感」につながりました。

ツアーボールですので十分な耐久性も備えています。ツアーボールのカバーに求められる軟らかさを有しながら耐久性が必要になるのですが、一般的なウレタン素材ではこれほど強いものというのはほとんど存在しません。そこが難しい課題ではあるのですが、独自の配合技術により一昔前に比べればかなり耐久性は上がっています。

例えば、10年前のボールと比べると、当時のボールだと傷がついてしまっていたような打撃条件でも、同じ条件で傷がほとんど見えないくらいの強さの差があります。

—契約プロだけにとどまらず、契約外のプロや一般のアマチュアゴルファーにもユーザーが増えています。ゴルファーから評価されている理由は?

個人的には、品質と性能の確かさじゃないかと思っています。
長年、「TOUR B X/XS」ボールを作ってきて積み重ねてきたもので、そこはこだわりがあります。

生産性を確保することも重要で、せっかく良いものが出来ても歩留まりが悪かったりしては製品にはならないので。工場の生産体制でいかに上手く作れるようにするか、安定して製造可能となる材料の選定も非常に重要になるポイントです。

—同じように作るのも簡単ではないんですね

ゴルフボールの表面に軟らかいカバーを作るのは、ものすごく難しくて大変なんです。ウレタン成形を行っているような会社でも、我々が使っている材料で作ろうとしても、おそらくほとんどの会社では作れないでしょう。それだけ特殊な材料なので、それは「TOUR B X/XS」ボールの強みにもなっています。

ウレタンカバーは、熱して溶かして冷やして固めるという工程を経るのですが、溶けているときは本当に水のような液体状で、それをカタチにしなくてはいけなくて、しかも均一性が求められる球体で、0.何ミリという非常に薄い薄さでつくります。本当にそれはものすごく難しいんです(笑)

—変色もしにくいし、耐久性も向上しています

以前は、カバーが陽に焼けて黄色っぽく変色したりしていました。太陽の光に焼けにくい性能を耐光性、または耐候性と言います。練習場のレンジボールは日射を強く受けることを想定しているので、強い耐光性を持たせますが、ツアーボールはまず性能を出すことが重要です。その上で耐候性を上げる努力をしています。

プロからの評価も高く、出来上がったときはこれで完成形かなと思うこともあるのですが。出来上がると、また新たな要望が出てきます。それをクリアし続けて、さらに良いボールにしていきたいですね。

PROFILE

望月 雄宣 プロフィール
2011年入社 ボール基礎技術開発部 所属
入社以来、ウレタンを中心にゴルフボールの材料の開発を担当。NEW「TOUR B X/XS」の「リアクティブ・ウレタンカバー」を生み出した「ウレタンカバー開発」のスペシャリスト。